その後のその後のゲタ吉
2-1
スズキキヨミ

Vol.3 「 妖怪阿波踊り婆、現る!」

 一家でしゃぶしゃぶをした。
おかんが喋りまくる。復活したおかんは、方言と言うより、かなりオリジナルな言語で喋るので、ほとんど内容が解らない。
かなり長く喋っていたが、どっかにタヌキが出た、という事しか掴めなかった。
前回のコムスメの件もあり、俺が会話を聞き取れない人間に思われるかもしれないが、そんな事はない。
入れ歯を外した老人との会話も出来る程の実力だ。

そんな空気の中での、しゃぶしゃぶも終盤になった頃、エノキダケを箸で掴んだおかんが、こう呟いた。

『アントニオ・エノキ』

………どうする?
聞き流すか?

笑ってやるにも、間が開きすぎた…。
そう考えている俺の存在が、ハナからなかったかのように、おかんは「阿波踊り!阿波踊り!」と言い出した。
そして俺をどかし、スペースを確保しだした!
阿波踊りには、男踊りと女踊りがある、らしき事を言っている。
ダジャレの次はウンチクか?
この歳になっても実の親に慣れていない俺を完全にシカトした、ある意味、俺的にはモンスターペアレントなおかんはついに、 踊り出した!
別に呑んでいるワケじゃないし、我が家のしゃぶしゃぶは酒でやるわけでもない。
俺は、踊るおかんを見ながら考えていた。
この人がボケた時に、果たして自分は気付けるのか?
不安だ…。


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2009 水木伝説オリジナル企画