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 |  Vol.3 「 妖怪阿波踊り婆、現る!」
 
 一家でしゃぶしゃぶをした。
 おかんが喋りまくる。復活したおかんは、方言と言うより、かなりオリジナルな言語で喋るので、ほとんど内容が解らない。
 かなり長く喋っていたが、どっかにタヌキが出た、という事しか掴めなかった。
 前回のコムスメの件もあり、俺が会話を聞き取れない人間に思われるかもしれないが、そんな事はない。
 入れ歯を外した老人との会話も出来る程の実力だ。
 
 そんな空気の中での、しゃぶしゃぶも終盤になった頃、エノキダケを箸で掴んだおかんが、こう呟いた。
 
  『アントニオ・エノキ』
 
 ………どうする?
 聞き流すか?
 
 笑ってやるにも、間が開きすぎた…。
 そう考えている俺の存在が、ハナからなかったかのように、おかんは「阿波踊り!阿波踊り!」と言い出した。
 そして俺をどかし、スペースを確保しだした!
 阿波踊りには、男踊りと女踊りがある、らしき事を言っている。
 ダジャレの次はウンチクか?
 この歳になっても実の親に慣れていない俺を完全にシカトした、ある意味、俺的にはモンスターペアレントなおかんはついに、
踊り出した!
 別に呑んでいるワケじゃないし、我が家のしゃぶしゃぶは酒でやるわけでもない。
 俺は、踊るおかんを見ながら考えていた。
 この人がボケた時に、果たして自分は気付けるのか?
 不安だ…。
 
 
 
 Vol.4 「ミスターECOLOGY」
 
 偶然、近所の犬の銀次郎に出会った。
 いつ見ても男らしい奴だ。
 
  こんなに軽トラを乗りこなせる犬は、銀次郎をおいて他にはいないだろう。
 時代に流されずに硬派を貫いている。
 
 時代といえば、今『オシャレにECO』な風潮だ。
 俺から言わせれば、オシャレとECOは両立しない。
 何故なら奴らは時代遅れのダサくなった服を着ないからだ。
 15年前におとんが買って来た、Budweiserと書かれたTシャツを着るか?
 ベトナム帰りの伯父さんから貰った、甲にI LOVE YOUと書かれた靴下を履くか?
 おかんが買って来た、スラムダンクのトランクスを穿くか?
 俺は、今だにMDウォークマンだ!
 銀次郎が人間なら、Budweiserも靴下もスラダンパンツも余裕だろう。
 俺達こそが、ミスターECOLOGYだ。
 俺達こそが、地球を救うのだ!
 
 
 
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