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Vol.15 「 DIVE!!! 」
今日も夕陽がキレイだった。
家の近くにある、大きな橋越しに見る、海に沈む夕陽は絶景だ。
その橋は、大きくて汚い河に掛かっている。
隣のばーちゃんが若い頃はシジミ漁が盛んだったらしいが、今はウシガエルが盛んに繁殖している。
以前、そこで採れたばかりの新鮮な魚を食べて吐いた。
医者から『 あそこはヘドロが多いから、食べてはいけない 』と言われた。
親父が河(汚い)で亀を捕まえてきて、家で飼おうとしたが、あまりの臭さに結局、河(汚い)に返した。
数年前も、外国の水質調査の研究者がやって来て、その河(汚い)を『 世界でも希に見る汚さ。透明度は0に近い 』と評価して頂いた。
確かにいつもカーキ色だ。
わざわざ、外人呼んで調査してもらわなくても知ってる。
地元の年寄りがゴミや、生活排水を流すからだ。
中学の写生大会は、毎年この河(汚い)で行われた。
水は汚いが、周りは緑が生い茂って、鳥のさえずりが響く、絵になる場所なのだ。
中3の写生大会の時、写生している向こう岸に男が走って来た。
誰かに追われていた。
追いかけている方は黒っぽい服を着ていて、何かわめいていた。
追われている方は、俺達が対岸で見ている前で……
ばしゃーん!!
河(汚い)に向かって思いっ切りダイブした!
のどかに河(汚い)に浮いていた水鳥達がけたたましい声を上げて、一斉に飛び立った。
追いかけていた人は、お巡りさんだった。
河(汚い)に向かって叫んでいた。
ダイブした男は、沈んだまま、一度も浮かんでこない。
小さい頃から、ばーちゃんに『あそこは汚いから、落ちたら浮かび上がらない』と聞かされていた。
だから、その河(汚い)は自殺者も多かった。
パトカーや消防車、救急車がサイレンをけたたましく鳴らし集まって来た頃、先生達はヒステリックに、
写生大会は中止!解散!と指示を出しながら、俺達に帰る準備をさせた。
夕方のニュースで、河(汚い)にダイブした男は、下着ドロをしているところを、お巡りさんに見つかり走って逃げて、
そのまま河(汚い)に飛び込み、亡くなったと知った。
あの河(汚い)は…。
昔、酔っ払いながら犬の散歩をした親父が、よくゲロを吐いた河(汚い)だ。
Vol.16 「 sex、drug & rock'n'roll 」
セチ辛い世の中だ…。
給料は上がらないし、ボーナスも減った。
アメリカのリーマンブラザーズの破綻から始まった、世界的なビンボーだと言う。
たかが、サラリーマンの兄弟が破綻したからって、何で俺まで、ビンボーにならなきゃならないんだ!
俺は、まだまだ欲しい物があるんだぞ!
ナメんな!
俺は、一人っ子なんだ!欲しい物を我慢すんのは慣れてね〜んだ!
アメリカのサラリーマンの兄弟!俺に謝れ!
…てか、ばーちゃん、何で死んでしまったんだ!
何でも買ってくれた、隣のばーちゃん…。
このセチ辛い世の中を、サバイヴしていく自信がないよ…。
ああ〜!DSi、欲し〜い!
と、一人息子の俺がデッドロックな状態で苦しんでいるのも知らずに、今日も、おかんはタフにセチ辛い世の中をサバイヴしている。
ってか、おかん自身がセチ辛い。
ウチがずっとお世話になっている、近所の医院(人間用)がある。 親父の代から開業していて、今は息子が継いでいる。
その息子は人当たりが良くて、親父の時代以上に、その医院は繁盛していた。
が、数年前に、その息子はハッパで捕まった。
学生時代からの友達と、仲良くハイになっていたのだという。
それ以来、おかんはその医院を『 大麻 』と呼んでいる。
おかんの使用例→『 あ〜、風邪ひいたわ。大麻んとこ行って点滴打ってこよ〜 』
ウチの近所に、おかんが行きつけの美容院がある。
母親が美容師で、自宅に店を併設した、よくある近所相手の美容院だ。そこに息子夫婦も同居していた。
が、昨年その息子が嫁の妊娠中に、数件の婦女暴行で捕まった。
一人暮らしの若い女性を狙って、女性のアパートに忍び込み、エロい系の暴行を重ねる、という計画的なものだった。
それ以来、おかんはその美容院を『 レイプ 』と呼んでいる。
おかんの使用例→『 あ〜、白髪目立ってきた。レイプんとこ行って、染めてこよ〜 』
ウチのおかんは、自分に甘く、他人に厳しい。
自分は絶対に謝らないが、他人の罪は忘れない。
近所の人にも、自分の付けたあだ名で話す。
おかん達の使用例・応用編その1
『 あんた、風邪よくなった? 』
『 うん!大麻に点滴打ってもらったら、スッキリしたわ〜 』
おかん達の使用例・応用編その2
『 あんた、パーマあてたん?いいわぁ!どこで、あてたん? 』
『 そぉ?パーマいい?レイプんとこや!』
…セチ辛い…。
世の中は げにセチ辛き ものなりや
ゲタ吉
思わず一句読んでしまいました。
セチ辛い、セチ辛い…。
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