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Vol.27 「 ピンクフラミンゴ 」
昨日、久しぶりに中本のおばちゃんを見た。
随分年を取っていて一瞬わからなかった。
お互い様だが。
中本さんちはヤクルトの販売店をしていた。
10年以上前に、このおばちゃんに助けを求められた事がある。
真っ昼間、中本の家の前を通りかかると、
『 助けて〜!あ、あんた!田中さんとこの子!ちょっと助けて!』
おばちゃんは犬小屋の前で犬に覆い被さっている。
犬がどうかしたのか?
動物を愛する俺は走って犬小屋へ向かった。
『 この野良犬が、ウチのマリちゃんを!あんた、この野良犬を私と一緒に抜いて!』
中本マリちゃんと野良犬が交尾していた。
『 腹デカなる!早く野良犬はがさんと!』
おばちゃんがマリちゃんを抑え、俺は野良犬を剥がす事にした。
『 なかなか離れんやろ!ゲタ吉っちゃん、頑張ってね!』
犬達はキャンキャン言いながら、おばちゃんの方に前進していく。
おばちゃんは
『 アラ?アラ?』
と言いながら、犬達に押され役に立たない。
マリちゃんを犬小屋に突っ込み、野良犬を屋根に引っ掛け何とか抜けた。
疲れた…。
おばちゃんも、へとへとだ。
『 ゲタ吉っちゃん、ありがとう。
助かったわ〜。
な、マリちゃん。ゲタ吉っちゃんにありがとうって。』
おばちゃんは、笑ってマリちゃんを撫でた。
『 ヤクルト飲むか?ゲタ吉っちゃん、ヤクルト好きやろ?ヤクルトよりミルミルの方がいいか?』
俺はミルミルをチョイスして、イッキ飲みした。
おばちゃんに、ミルミルのお礼を言い、
『 マリちゃん、避妊しな 』
と助言をした。
交尾中の犬は、なかなか抜けない。
また一つ、おりこうさんになった俺は家路に向かった。
背後から
『 あ!今日ヤクルトの集金に行くから!
お母さんに言っておいてね〜!』
と、叫ぶおばちゃんの声が聞こえた。
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